トラウマ診療でベラミさんがお世話になっているカウンセラーの先生(通称マチ先生)に言われた言葉。
「トラウマを抱えてる人は、一番心を許してる身近な人を一番攻撃してしまう。ただ、それは今のNoxさんに向けて攻撃しているわけではないんです。Noxさんを通じて、過去の自分やトラウマ加害者に対して攻撃しているんです。だから、攻撃的な言葉を真正面から受け取らないでください。」
これ、トラウマを抱える人を支える側(サポーター)の一番つらい部分のひとつだと思う。
「フラッシュバック中は、Noxさんが傷付くような事やわざと苛立たせるような言葉を投げつけてきます。そうする事で、Noxさんの反応を引き出そうとします」って、マチ先生にも丁寧に教えてもらった。
だから、「攻撃モードに切り替わってるベラミさんは、仮の姿で本来の姿ではない。」そう言い聞かせても現実の彼女の目の前には僕しかいないし、彼女の口から発せられる攻撃的な言葉は、「あなたは」なんて、ご丁寧に僕宛になっている。これを受け取らずに流すのは相当難しい。
サポーターは、この苦しみと常に戦わなければいけない。
この時に、僕の選択肢は、反論する、耐える、逃げるの3つのコマンドしかない。そして、その内のひとつ「反論する」は、最も避けるべきコマンドだから、実質の選択肢は2つ。「耐える」か「逃げる」のみ。
些細な事からフラッシュバックを引き起こしたベラミさんは、僕を敵だと信じて疑わない。過激な言葉や無視、時には暴力、そして過剰なまでの被害者意識から繰り出される僕への攻撃は、クリティカルヒット間違いなし。
僕も時々怒りを抑えきれずに、つい強く反論してしまう時がある。結果、状況はもっとひどくなるわけで。時々僕は、サポーター側には、怒りや悲しみを卓越した人間以上の存在でいる事を求められているように感じてしまう。ここがサポーター側の本当につらい部分だと思う。