ベラミさんの許可を得て行っていたとは言え、僕が一人でカウンセリングに行った事でベラミさんの不安は大きくなっていた。
その日の夕方、ベラミさんからは「カウンセリングに行ってどうだったんですか」とラインが入る。
僕は、「それは、カウンセリングで何を話したのか聞きたいの?それとも、カウンセリングに行って僕の感情がどうなったかを聞きたいの?」と尋ねると、
「全部です」と返ってくる。
ベラミさんの特徴として、昔から些細な事でも自分がその場にいなかった時の事を全部教えてもらわないと気が済まないところがあった。
子供たちとの学校生活でも、僕の行動でも、全部を聞きたいのだ。
男女の考え方の違いや、父親母親の感覚の違い、人それぞれ価値観の違いはあるけど、ベラミさんの場合は、それに加えてトラウマによる不安からくる「知っていないと怖い」が影響しているっぽい。
それが、自他の境界が曖昧になっているひとつでもあるのだ。
カウンセリングも「どんな事を先生と話したのか」「先生は私の感情やNoxの対応で苦しんでる事は、本人にきちんと伝えてくれたのか」「Noxは私の事をどんな風に伝えたのか」「私は悪くないのに、また私を悪者のように伝えてるんじゃないか」「私の知らないところで、何をどう伝えられているのか」と思う気持ちの方が強いのかもしれない。
思えば、ベラミさんはトゥモローの「自分ノート」をこっそり見ていたり、僕がベラミさんの症状を書き留めたノートを見たりしていた。
ベラミさんは、その理由として「子供の気持ちを把握しておきたいから」「何かがあってからじゃ遅い」「たまたま机にノートがあったから見ただけ。そしたら私の事を書いてあった」など、自分は正しい、自分は守られるべきだ的な言い訳をした事があった。
思えば、これも自他境界の曖昧さ、知らないことの恐怖からの行動と、その後の自己防衛の言い分だったのだと思う。
そして、僕がカウンセリングに行ったその日の夜と翌日にベラミさんは激しいフラッシュバックを起こす。
続く